第四章 性癖
「あ…シン。それ以上突かれたら…私…」
玲香は体をのぞけった。言葉とは裏腹に腰を高くつき上げた。
俺は半ば汗だらたらになりながら、玲香に突きまくった。
なにを???そうバ●ブをだ。
玲香は一言大きな声を出してぐったりとなった。いやむしろ俺がぐったりだ。
もう右腕がつりそうだった。筋肉がピクピク脈動している。
事を終えた玲香は俺ににっこり笑いかけ俺の腕をさすりはじめる。
いつもの日常。いつもの光景だ。
そう。おれは玲香とつきあって2年になるが、実は俺自身を挿入したことがなかった。
正直自分でもなぜ興味がないのか不思議だった。
いや。正直に言えば入れたいと思ったことも当然ある。が
自分が相手に腰を振っている姿が想像もできない。たぶん面倒なんだろう。
疲れることはしないのが俺の主義だ。
何より自分にとって相手の見てはならない部分をじっくり観察したりする方が興奮できた。
だから態勢は「69」が多かった。
アダルトDVDを見ても興味が惹かれるのは、前戯だった。
こんな異常性癖な俺でも、玲香は一言も不平を俺に呟いたことがなかった。
「なぜだろう?」
「演技なのか?」
「満足なのか?」
俺は度々疑心にかられた。
それでも俺は玲香を愛し、世の中で一番大事な人であることにウソ偽りなどあるはずもない。
今日は玲香とつきあってから2年のいわば交際記念日だった。
2年前の湘南の海の防波堤で、俺は玲香に告白した。玲香も素直にうけいれてくれた。
そしてその日の夜、玲香にもう一つ告白した。
俺の性癖について…。
玲香はだまって頷いていた。
その目は俺への蔑みなど微塵も感じられなかった。
もしかしたら今日こそは…。玲香もそう思っていたかもしれない。
俺は腕をさすってもらいながら、玲香に一言「ごめん」と謝った。
玲香は何も言わず、ただにっこり笑って、俺の腕をさすってくれる。
そして、玲香は俺の顔の上でまたがり、俺のを口で奉仕しはじめる。
俺も玲香の中に舌を這わせる。
相手の一番見られたくない部分が俺の眼前に広がる光景。
いつも見てきた玲香の陰部が俺の目の前にあるだけで、激しく勃起する。
そして、数分後俺は玲香の口の中に放出する。
そう。いつもの光景だった。
玲香とはこの2年間、いろんな場所でデートをした。
夏は海、冬はスキー、そして遊園地や水族館、観光スポット巡りやライブ等、そして当然ディズニーランドにも。
楽しかった。俺は純粋にそう思う。
ただ、この半年で俺の環境は変わった。まず、玲香は短大なので、すでに働き始めていた。
俺はまだ大学3年だ。
そして何よりも、俺の生活は中心はスロットが占めるようになった。
玲香と週一回のデートの最中でもどこかで、スロットのことが頭の片隅によぎることがしばしばあった。
(今日は確か激熱のイベントだよなぁ)
俺は玲香にゼミの宿題があるといって、デートを早めに切り上げたり、断ったりすることが出てきた。
また大学の授業もゼミや必修科目以外、出席することがなくなった。
大学での講義の最中もスロットの機械割や立ち回りについて思い巡らせていた。
「どうしたの?」
不意に玲香が俺に尋ねる。玲香は俺のを飲み干していた。
「いや。ちょっと考え事だよ。」
「なんか、最近考え事多くなったね。心配事?」
「ユウタがさぁ。あいつ退学したんだよ。」
「えっ」
すでに、玲香には俺がつるんでいる3人とは面識がある。
「清水君どうしたの?」
「あいつ、ギャンブルに嵌っちまったんだ。依存症らしい。それで大学も中退した。」
「競馬?」
「いや、スロットだよ。」
「…そうなんだ。」
「バカだよなぁ。スロットに嵌って人生投げ出すなんて…」
「シンは大丈夫だよね?」
俺は予期していた質問に対する答えをすかさず玲香に告げた。
「嵌らないよ。それで人生棒に振るほど暇じゃないしな」
だが、実際スロットに人生依存しつつある自分がいた。
「そういえば、玲香が前に付き合ってた彼氏って、やっぱギャンブル狂だったんだよな。」
「うん。そうだね。今はもう足を洗ったみたいだけど…」
「そうか。当時それが原因で別れたんだって?」
「うん。」
「もし俺がギャンブルに狂い出したら、やっぱ別れるか?」
「なんでそんなこと聞くの?」
「いや。別に…」
「別れたくないけど、きっと別れると思う。だって…」
これ以上聞きたくなかった俺は、玲香の唇に自分の唇を重ねた。