第8章 告白

「…そうか」
「バカだったよ俺は…」
「あまり気にするな。過ぎたことを悔やんでもしょうがない。」
「ああ。だけど、清水につづいて、カリちゃんまで…」
「もう、俺たちは元に戻れないんだな。…4人で麻雀もできなそうだな。」
「…すまない。」
「いいか。タケ。もうパチスロはやめろ。」
「…」
「俺の姉貴の話知っているだろう」
「確か旦那さんを刺して…」
「ああ。だけどあいつは最低な奴だったよ。完全な依存症だ。姉貴に対しても何度もひでー目に合わせやがって…」
「…」
「姉貴は本当に強かったんだ…心がね。その姉貴が我慢の限度を超えたんだよ。いったい何を言われたのか。何をされたのか…」
「…」
「たけ。清水はもう中退した。苅谷は今ムショにいる。俺はお前を裏切りたくない。だからパチスロは絶対やめろ」
「…あぁわかったよ。タツヤ」

 

電話を切った俺はしばらく呆然とベッドに突っ伏した。

 

何が…いったい何が人生を狂わせちまったんだ…。
考えるまでもなかった。

 

どうすればやめられる。この愚かな人生の連鎖。直下型人生を…。

 

涙が出てきた。なぜ手を出してしまったのだろう。
死ぬまで搾取され続けるのか。俺は…

 

1時間ほど経ったころ、再び俺の携帯の着メロが流れ出した。
「…玲香」
「シン。どうしたの元気ないけど。今日は講義ないんだよね」
「あぁ。」
「久しぶりにデートしたいんだけど。今日の6時とか空いてる?」
「悪い。気分が乗らないんだ。なんか熱っぽいし」
「風邪…」
「たぶん」
「またスロット行くの?」
「あ?」
「だって最近シンおかしいよ。いつも上の空で…」
「うるせえな。風邪だよ」
「…」
「悪い…。本当に具合が悪いんだよ…」
「そうか。わかった。じゃまた電話するね。」
「あぁ。本当に悪いな。」

 

なんとなく腑に落ちなかった。なぜかは解らないが…。
玲香の口からスロットという言葉を聞いたのは初めてだった。
それがひっかかるのか?
確かに俺がスロットをしていることは玲香は知っていた。
でも、依存症ということまでは…知らないはず。
うまく隠していたはずだ…。

 

もうやめよう。本当に…。
このままでは、二人の友人に続き、親友と彼女を失う。
そうだ。キャッシュカードと現金を持たずにこれからは外出しよう。
それなら物理的に打てない。
現金は最低限の金額だけでいい。

 

少し光明が持てた気がした。なんとか負の連鎖を断ちたかった。
ここから俺の禁パチ人生が始まろうとしていた。

 

第九章 復帰